ハンターバンク川口ってどんな場所? ~八王子駅から30分、“都市と野生の境界”へ~
「都内から来たの?」
川口で地域の方と話していると、時々そう聞かれることがあります。
でも、ここも東京都八王子市川口町。ちゃんと都内です。
ただ、23区と三多摩地域では、同じ“東京”でもイメージが違うのかもしれません。
八王子駅から30分ほど。
住宅地を抜けると、そこには箱わながあり、夜になるとイノシシやシカが歩いています。
ハンターバンク川口をスタートして、もう1年半ほどになります。
箱わなの管理やトレイルカメラ確認、もちろん捕獲対応でも何度となく通い、地域の方と話し、季節ごとの変化を見ているうちに、少しずつ川口という地域の面白さが見えてきました。
今回は、そんなハンターバンク川口のフィールドについて紹介してみようと思います。
※箱わなの運用については、以前書いた「箱わなのON/OFF問題」の記事でも少し触れています。
■川口町ってどんな場所?
川口町は、八王子市の西側にある地域です。
川口川に沿って走る秋川街道(川口街道)を西へ進むと、小峯トンネルを抜け武蔵五日市方面へつながっていきます。
川口川の最上流、今熊山には今熊神社がありますが、高尾山周辺ほど観光地化されておらず、休日でも比較的静かな山です。
川口丘陵や南加住丘陵に囲まれ、ゴルフ場や畑、雑木林が広がります。
一方で、アクセスの良さから、都心への通勤圏でもあります。
川口町やその周辺を含む旧川口村エリアは、地域によってそれぞれに特徴があります。
最も八王子駅に近い楢原町のあたりは、スーパーや飲食店も多く、バスも7〜15分に1本ぐらい来るので、八王子市街地に近い感覚です。
一方で、上川町まで行くと雰囲気が変わります。八王子市内とは思えないほど住宅がまばらで、バスも1時間に1本程度。
さらに、上川町の最奥、秋川街道から今熊山方面へ伸びる道に入ると、本当に静かになります。ここにはもちろんバスもありません。

東京で、急に人の気配が切れる地域がある。
この感覚は、実際に来てみると本当に不思議に思います。
楢原町から今熊山まで、たった8kmで都会から山奥に変わります。
川口は変化のグラデーションが大きい、都市と野生の境界のようなところです。
昔はこのあたりでも稲作や麦作が行われ、里山の資源を利用しながら人が暮らしていました。
今でも、薪や炭を作るのに使っていたであろうコナラの木が巨木になっていたり、谷戸田の跡地が残っていたりします。
また、かつて養蚕に使われていたと思われる桑の木が大きく育っていたり、昔の名産だった栗の木が立派に残っていたりして、地域の歴史を感じることもあります。
一方で、高齢化や農地利用の変化もあり、管理されなくなった場所も少しずつ増えています。
そして、そういう場所に動物たちが染み出るように広がりつつあります。

■川口にはどんな生き物がいる?
川口周辺は、思っている以上に多くの生き物を見ることができます。
特徴的なのは、都市型の生き物と、里山の生き物がかなり近い距離で混ざっていることです。
住宅地周辺では、アライグマやハクビシン、ヒヨドリのような都市型の生き物をよく見かけます。
一方で、少し山側へ入ると、イノシシやニホンジカ、タヌキ、アナグマなど、里山らしい動物たちが普通に生活しています。
鳥も面白くて、都市部に多いハシブトガラスと、里山に多いハシボソガラスが同じ場所で見られます。
外来種のガビチョウも普通にいますし、上空をオオタカが飛ぶこともあります。
住宅地と山が近いため、人と生き物の距離感も独特です。
昼間に街道から見ると普通の住宅地ですが、夜になると急に空気が変わります。
トレイルカメラには、昼間は人しか映らなかった場所に、夜になるとシカやイノシシが現れることも珍しくありません。
また、尾根筋に広がるゴルフ場や川口川やその支流は、動物たちの移動経路になっているように感じることがあります。
人間から見ると「施設」や「空き地」でも、動物から見ると移動しやすい場所なんでしょうね。
最近は八王子市内でもクマの話題が出ることがあります。
今のところ、川口でツキノワグマをトレイルカメラで確認したことはありません。
ただ、元八王子方面では目撃情報もあり、山地とのつながりを考えると、いつ現れても不思議ではない地域だと思っています。

■1年通して見えてくること
ハンターバンク川口を続けていると、季節ごとに動物の行動が大きく変わることが分かってきます。
特に印象的なのが、栗とタケノコです。
川口周辺は昔から栗の木が多い地域で、今でも山際や住宅地の裏に古い栗の木が残っています。
秋になると、人間が拾うより早く、イノシシが栗を食べに来ることがあります。
また、春のタケノコもイノシシにとっては重要な餌です。
タケノコの時期になると、竹林周辺の掘り返しが急に増えます。
1年通して川口の風景を見ていると、
「今は何を食べに来ているのか」 「どこから移動してきているのか」
みたいなことが、少しずつ見えてきます。
そして、動物が増えてくると、被害も少しずつ広がっていきます。
昔は山際の畑にだけ被害があったと聞きますが、最近では山から離れたトウモロコシ畑や麦畑にも動物が出没するようになっているとのことです。
出没地点の近くには小学校や中学校もあり遭遇だけでも事故につながる恐れもあります。
獣害というと、「山奥の問題」というイメージを持つ人も多いですが、実際には住宅地のすぐ近くで発生する獣害が一番大きな問題です。

■少しずつ地域との関わりも増えてきた
ハンターバンク川口を続ける中で、地域の獣害対策に関する打ち合わせへ参加させてもらう機会も増えてきました。
ハンターバンク川口の運営をする株式会社クイージ(cuiiji)として、箱わなの管理や捕獲だけでなく、トレイルカメラ画像や獲れ高情報の共有なども行っています。
「最近はイノシシが多い」 「このあたりで動きが増えた」 「今年はシカが多い」
そんな情報でも、地域で共有すると少し役に立つことがあります。
もちろん、有害鳥獣対策としてハンターバンクによる捕獲も重要です。
でも実際には、それだけではなく、地域全体で動物の変化を見続けることも大事なんだと感じています。
平日は都内へ通勤して、週末は川口で箱わなを見る。
そんな活動が成立するのも、この地域ならではかもしれません。
完全な山奥ではない。でも、野生動物との距離は近い。
住宅地、ゴルフ場、畑、雑木林、そしてイノシシやシカ。
いろんなものが混ざり合っているのが、川口という地域の面白さなんだと思います。
ハンターバンク川口では、こうした都市近郊の里山で、実際に箱わな管理や獣害対策を学ぶことができます。
興味のある方は、ぜひ説明会や現地フィールドにも遊びに来てください。
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