さまざまなスタイルで「ハンターバンク」を利用しているハンターさんたち。
狩猟を始めたきっかけも、活動のペースも多種多様なのですが共通するのは〈自分らしく〉楽しんでいること。そのあたり、聞いてみました。

ハンター体験記 Vol.6 鈴木毅人さん [その2]

300年間に渡って山林を守ってきたホストさんは、
山だけでなく里との繋がりも考えていました。

鈴木さんの会社がホストとして提供してくれているフィールドは、小田原市の中心部からすぐ近く。周辺には公園やレジャー施設も数多く、休みの日には多くの人が集まるエリアです。そんな場所で山を守っていくためには、関係者しか立ち入らないような山奥の守り方とは違って、里に近い山ならではの難しさもあるようですが……。狩猟とは違う目的で山に来る人が、狩猟に興味を持つようになる。あるいは小田原の山に縁のなかった人が、遠くから来てくれる。そんな相乗効果への期待も、ホストとしてハンターバンクに参加することの面白さだと話してくれました。

──そういえば鈴木さんご自身は狩猟されるんですか?

鈴木さん: 狩猟免許はまだ取ってないですね。興味はあるので、いずれ取ろうとは思ってますけど。ただ、現場では合法な範囲で、止め刺しから解体まで全部経験はありますよ。

──ということは、生きてる獣がどういう流れで肉に変わっていくのか、命がおいしく変わっていくプロセスというのは、実体験として経験値はたくさんあるんですね。

鈴木さん: ありますね。しかも僕の場合、肉に見えてくるタイミングがわりと早いんです。どのくらいの状態から肉に見えてくるか、っていろんな人に聞くんですけど、僕は皮を完全に剥き終わってなくても、もう食べ物に見えてきちゃってますね。

──なるほど。それはなかなかレベルの高い……。

鈴木さん: 魚突きとかもやるんですよ。魚突きって、獣を締めるのに比べてなんでもないかな。と思いきや、やっぱりグロテスクなんですね。魚だって内臓が飛び出たままでも生きていて、逃げていくんで。だからこそ、真剣に捕ってあげないとかわいそうだと思うんです。そこが雑だと、ただの残虐行為になっちゃうんですよ。そういうのずっとやってたんで、獣の場合も、そこに抵抗感はないですね。あと、水族館も回遊水槽とか、見ているともうお腹が空いちゃってしょうがないですね。

──ハンターバンクに参加しているハンターさんとか、狩猟に興味があって見学に来る人だと、そういう人も少なくないでしょうね。

鈴木さん: そうでしょうね。でも、マウンテンバイクのコースに遊びに来てくれているお客さんも、その辺りに興味のある人はすごく多いんですよ。バーベキューで「この山で獲れたイノシシを出します」なんていうと「最高ですね!」と返ってくるような感じで。もちろん個人差はあると思うし、親子で来ているお客さんにとっては「子どもにどこまで見せるか」という部分では「絶対にダメ」という人もいらっしゃいますけど、基本的には皆さん、山が好きなんですよね。だからといって、じゃあレジャーのお客さんに止め刺しから体験してもらえるかといったら、それはさすがに難しいと思うんですが、内臓を抜いて、皮を剥いで……という段階からなら、サービスとして成り立つんじゃないかとも思っています。もうひとつのレジャー施設、ワイヤーで樹間を飛んでいくほうのお客さんはもっとお子さま連れなんですが、この山でも獣が山を荒らしているんだよ、という背景と、だから獲って食べるんだよ、というバーベキューの部分なら提供できると考えています。

───ハンターバンクでの成果って、ハンターさんの場合には「イノシシが獲れた!」という部分でわかりやすいんですが、鈴木さんの会社のような多角経営のホストさんの場合だと、獣害が減ったという実績に加えて、相乗効果への期待もある、ということなんですね。

鈴木さん: そう思ってます。より多くの人、いろんな層の人が来てくれて、そこから狩猟に興味を持っている人がまた小田原に来て、うちの山でちょっとやってみたいな、という人が増えてくれるといいな、と思っていますね。

──実は今回、初めてホストさんにお話をうかがえるということで、なにを持って成果と捉えていらっしゃるのか知りたいと思っていたんですよね。もちろんハンターさんが増えて、猟果も増えて、目に見えて獣の数が減れば、それは大きな成果なわけなんですが……。

鈴木さん: うちの山の場合は、管理してる部分が山奥ではなくて、里山なんですよ。それも近くに公園があったりとか、普通に人が入ってくるような範囲で。その意味ではロープで区切らないと子どもが入ってくる可能性があるような場所ですし、設置した箱わなが歩いている人から見えるなら説明の看板も設置したほうがいいかな、という場所なんです。そう考えると、深い山で深刻な獣害に悩まされているエリアとは、ちょっと違うと思うんですよね。いま、アクティビティー的にハンターバンクを楽しんでいる人がいて、それがだんだん増えて、間口として広がっていく……という規模感でやっていければいいかな、と考えています。あと、野生鳥獣による林業被害というところでは、木の皮をめくられて甘皮を食べられることによって木がダメになる、っというのはもちろんなんですが、うちの山ではそれ以上に深刻なのが、シカであればヒル、イノシシであればマダニなんですよね。この10年でまだヒルは見ていませんが、マダニはうちのスタッフでも結構やられています。いずれ丹沢あたりからシカが入ってくれば、間違いなくヒルもついてくるわけで、気持ち悪いですよね、お客さんとしたら。丹沢では実際にそれで潰れたレジャー施設もありますし、もうギリギリのところだと思います。うちの山でトレイルランニングしていても、10年前には足を出したスタイルで走っていて平気だったのが、最近はシューズの中に入っていたりしますからね。そういう意味で、レジャーのお客さんのためにも、山の獣が増えないように、これ以上は降りてこないようにしておきたいわけです。でないと、マウンテンバイクを習いに来た子どもさんや、散歩の犬が、マダニを連れて帰ることになりかねないので。それは絶対に避けたいんですよね。

──そのあたりは「山奥での食害が減った」という話とは別の、里に近い山ならではの成果、ということなんですね。

鈴木さん: そもそもハンターバンクって、ひとつの場所だけで展開していくものではなくて、地域を広げていったり、面で考えていかなきゃならないものだと思うんですよね。獣は山から山に移動しますからね。その意味では、濃度としては高くなくても、横につながりながら広くやっていくのが大事だと思うので、いろんな地域でいろんな成功事例が増えていくといいですよね。

──本当にそうですね。ありがとうございました。



鈴木毅人さん(すずき・たかひとさん)
自然に関われる仕事を探して東京から移住し、小田原でちょっと変わった林業会社に転職。これからの林業、山林経営を考える中で必要と思う森林のレジャー業を展開してきましたが、そこでハンターバンクのホストも行うことになり、担当者として奮戦中。趣味はトレイルランニングで、ジビエも大好き。
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