さまざまなスタイルで「ハンターバンク」を利用しているハンターさんたち。
狩猟を始めたきっかけも、活動のペースも多種多様なのですが共通するのは〈自分らしく〉楽しんでいること。そのあたり、聞いてみました。
ハンター体験記 Vol.5 小蝶辺明日子さん [その3]
大きな自然の循環の中に、
ハンターバンクで自分の居場所が作れました。
動物の痕跡を探しながら、ひとり静かに山林を忍び歩いて……。ふんわりと思い描いていたという、そんな〈狩猟者さん〉のイメージとは、ずいぶんと違ったスタイルで狩猟デビューをすることになった小蝶辺さん。存在すら知らなかった〈箱わな〉でのハンター体験は、実際に自分で手を動かしてみれば、いろいろと納得のいくものだったようです。
──ところで、小蝶辺さんが最初におっしゃっていた狩猟者のイメージ、山で動物の痕跡を追いながら、最後はひっそりと近づいて……といったスタイルでは、基本的には銃を使わないと捕獲は難しいと思うのですが、それはこれからの挑戦で、ということですか?
小蝶辺さん: もともと狩猟者さんに対する私のイメージが、そういう山歩きの感じだったんですよね。狩猟といえばまず鉄砲、そうでなければくくりわな、みたいに考えていて……実は〈箱わな〉なんて、その存在すら知らなかったんです。それがハンターバンクで箱わな猟を体験して、設置とか誘引とか準備の手間はかかるけど、上手にできれば効率のいい手法のひとつなんだな、ということもわかったんですよね。それに、初心者でも危険性が少ない、という点は、箱わなでの捕獲を経験してみて、実感しましたね。実際に箱わなの中でイノシシが突進する様子とかを見ると……私たちの箱わなに入ったのはそんなにサイズの大きいイノシシではなかったんですが、それでもやっぱり「すっごく力が強いんだなあ」と思ったんで。あれがくくりわなだったとしたら、ちゃんと脚にかかっていても、イノシシはワイヤーの長さの分だけ……まあ、かなり動けるわけですよね……。
──くくりわなの獲物に近づくには、細心の注意だけでなく、度胸も必要でしょうね……。
小蝶辺さん: そういうわけで、単独でも狩猟するとなったら、まずは箱わなから始めて経験を積んでいくのが無難な気はするんです。とはいえ単独でいきなり箱わな猟を……というのも、猟ができる、箱わなが置ける場所を探したり、運ぶ手段を用意したり、そもそも自分だけで高価な道具をあれこれそろえたりするのは初心者には難しいわけで、誰か師匠を見つけて教えてもらうしかないのかな……。その点でも、まだ狩猟免許を持っていない素人の、右も左も分からない段階でも飛び込める、というハンターバンクのサービスは、ありがたかったですね。
──都市部の住人としては、そもそも土地勘もない、知り合いもいないところで狩猟することになるわけですからね。その中で、新米に優しくて教えるのが上手なベテランの狩猟者さんと出会う、というのは、現実的にはなかなか……。
小蝶辺さん: 私たちのグループではサポート付きのサービスを選んだんですが、マッチングしたホストさんやサポートハンターさんが本当にいろいろと助けてくださって、教えてもらうだけでなく、現場でのサポートがすごく手厚かった、っていう印象がありますね。狩猟にまつわるいろんなことを一気に経験できて、その中で、自分として「狩猟と、どう向き合いたいのか」というところまで改めて考えることができたのも、すごくよかった。
──なるほど。新米ハンターさんが銃を使ったグループ猟でデビューしたとしても、例えば自分の目の前に獲物がちゃんと現れるとは限らないし、現れたとして、自分で撃ててもちゃんと当たるとは限らないわけですものね。それで「獲物を仕留めた」というところまでを「一連の経験」だとすると、その一連の経験ができるまで、1シーズンや2シーズンでは足りないことも……。
小蝶辺さん: かなり時間がかかるでしょうね。実は私たちのグループにも銃猟の免許を持っているメンバーがいるのですが、グループ猟での経験としては、解体はみんなでやったけど止め刺しはまだ……みたいな話でした。それが箱わな猟なら、捕獲から止め刺し、解体までを一連の、自分の行為としてちゃんと経験できる、というのは大きかったですね。
──では逆に、ハンターバンクがもっとこうだったらいいな、と感じたことは、なにかありますか?
小蝶辺さん: どうですかねえ……パッと出てこない。あ、でも、これは私の考えが甘かっただけかもしれませんが、獲物がかかると「こんなにたくさんの肉ができちゃうよ」っていう現実は、先にわかっておきたかったですね。
──そこは……いよいよご自宅に冷凍ストッカーを、ですね。お話、ありがとうございました。
大きな自然の食物連鎖に憧れて、自分もその一部になりたい、という子どものころからの願望を、ついにハンターバンクで実現。お仕事では生物多様性のマクロな世界もテーマとして扱っていらっしゃいますが、もともとは分子生物学のミクロな世界を勉強されていたそうで、いまや粘菌からイノシシにまで循環の輪が広がった新米ハンターさんです。