さまざまなスタイルで「ハンターバンク」を利用しているハンターさんたち。
狩猟を始めたきっかけも、活動のペースも多種多様なのですが共通するのは〈自分らしく〉楽しんでいること。そのあたり、聞いてみました。

ハンター体験記 Vol.7 松本吉保さん [その1]

丸ごと美味しく食べるなら、自分の手で
──それもハンターバンクの魅力です。

狩猟の現場が遠い都市生活者でも、全くの未経験者でも、そして、場合によっては狩猟免許の取得がまだでも……興味と熱意さえあれば誰でも気軽に、しかも手軽に狩猟生活をスタートできるのが、ハンターバンクの最大の魅力。そんなハンターバンクのフィールドでは、さまざまなバックグラウンドを持つハンターさんたちが、自分らしいスタイルで、今日も〈山の恵み〉である獲物たちと向き合っています。

魚も鳥も、内臓まで全部を食べたいから丸ごと調理したい、という松本吉保さん。いずれは大きな獣も全てを自分の手で、と考えていたところに、ハンターバンクとの出会いがありました。そこで猟果にも恵まれ、念願だった、丸ごとで大きくて生きている獣から、という流れを自分の手で経験することができたのですが、そこには食いしん坊ならではの反省もあって……。

──今回お話をうかがうにあたってSNSも拝見したのですが、小田原のフィールドには、お子さんも一緒にいらっしゃることが多いんですか?なんか、可愛らしい写真が……。

松本さん:いや、あれはハンターバンク主催のイノシシ解体体験の時だったんですよ。子どもは、まだその一度だけですね。

──ハンターバンクでは、グループとしてはどんな感じで参加されてるんですか?

松本さん:まだスタートして2カ月ほどなんですが、友人に誘われまして、それで登録して活動を始めたという状況です。グループとしては8人、かな。まあ全員が知り合いなんですが。

──そもそもハンターバンクに参加するきっかけは何だったんですか?

松本さん: メンバーの一人がハンターバンクという存在を見つけてきて、これやろうよということで、仲間内で参加したい人間を募って、手を挙げたのがその8名だった、ということですね。

──メンバーの一人とおっしゃいましたけど、どんな感じのグループだったんですか?

松本さん: 自分たちでいろいろ獲って食べよう、みたいなことをわりとやっているグループなんで、釣りをしたり、魚を突いたりとか。で、そういったメンバーの集まりの中で「イノシシやってみよう、興味あるやついないか」みたいな流れですね。

──狩猟免許はお取りになったんですか?

松本さん: 私は持っておりません。これからの取得も、そこまではちょっと想定していないですね。

──なるほど。では、ハンターバンクでの猟果はどんな感じなんですか? 2カ月ほど活動をされていて……。

松本さん: 一度、イノシシが3頭まとめて獲れたということがありまして、まだそれだけですね。だいたい2歳ぐらいのヤツじゃないかとかいわれていましたけどね。

──扱いやすいというか、程よいサイズのが3頭も入った、ということですね。まあ、結構な猟果ですね。

松本さん: そうですね。箱わなを設置してから獲れたのも早かったんですが、なかなか獲れない方もいらっしゃるということをうかがいましたんで、ラッキーでした。

──頻度としては、どのぐらい通ってらっしゃいます?

松本さん: いや、通ってはないです。今のところ、掛かった時に1度行ったということですね。解体体験もありましたので、合わせて2回です。ヌカを撒いていただくのはグループのメンバーでなく、ホストさんに撒いていただいていまして、なにか特別な餌を撒きたいときにはメンバーが行く、と。直近ですと、トレイルカメラでイノシシの姿が全く見えなくなってしまったので、箱わなの場所を変えてみようということで、先週の土曜日にメンバーが何人か行っていました。

──松本さんのグループは、わりと省エネなタイプなんですね。それでも、なかなか獲れないチームもある中で3頭も獲れたんですから、山の神さまに愛されているチームなんでしょうね。

松本さん: ありがたいですね。全員が都内で会社員なので、なかなか行けないっていうのがなんともな……とは思うんですけども、いろいろとホストさんにお願いしながらやっています。

──それでも獲物にちゃんと巡り合えるというのがハンターバンクのシステムのいいところだと思うんですが、実際にその強みを活かしているチームだな、という感じがしますね。ところで松本さんは、ハンターバンク以前にも、例えば鳥を絞めたりといった経験はあったんですか?

松本さん: 絞めてはいませんが、鳥は、業者さんから羽付き内臓付きのカモを買ってたりして、家で羽をむしって内臓を抜いて食べたことはあります。

──なるほど。でも、内臓や毛がついていると大変じゃないですか?

松本さん: 内臓、食べたいんですよ。内臓を食べたいんで、処理される前の方がありがたいんです。
そうなると羽付きになるんですよね。

──なるほどね。食べるんだったらとことん食べたい、丸ごと食べたい、という強い思いをお持ちだった、っていうことなんですね。

松本さん: そうですね。親もきれいに魚の骨の周りを食べますし、最後は骨も焼いて食べたりしてましたから、そういうのを見て育っていて、丸ごとに馴染みがあったんだと思いますね。

──それにしても大きな獣に関しては、生きてるところから止め刺しをして、剥皮して、内臓摘出をして、という解体の作業をされるのは、今回のハンターバンクでの猟果が初めての経験ということですか?

松本さん: そうですね。解体体験では内臓が抜いてあるものでしたし。

──生きているところから止め刺しや解体をされてみて、率直な感想としてはどうでした?

松本さん: 命を頂戴するということで、感謝をして、ちゃんと丸ごと食べよう、という感じでした。実は止め刺しが一発で仕留められなくて……イノシシが暴れて、もう一回刺し直しをするっていうことをやったんで、ちょっとそこは反省してます。私、ずっと剣道をやっててですね、突くとなるとついつい喉を突いちゃうんで、胸を突くべきだったな、と。どこをどう突くかっていうところをちゃんと予習してやるべきだったと、そこら辺は勉強不足でした。

──解体体験の時には、どの部分から刃先を入れて、どの方向に刺すんですよ、みたいな説明もあるんじゃないかと思うんですが……。

松本さん: ああ、そうでした。忘れてました。そこはちょっとやっぱり、ドキドキしてたんだと思います。その時に考えていたのは、うっかり心臓に刺さってハツが食べられなくなったら嫌だな、と……。それで、胸を刺そうという気持ちにはなってなかったですね。ちゃんと刺すべきところを、経験の豊富な人に聞いて、忠実にやるべきでしたね。

──なるほど。それにしても、止め刺しに失敗した理由がハツを刺したくなかったから、って、そういう人もなかなかいないですよね。
松本さんのお話は[その2]へと続きます。



松本吉保さん(まつもと・よしやす)
魚も鳥も丸ごと、内臓までとことん食べたい!という食いしん坊の鑑。いずれは大きな獣も自分の手で、と思っていたところにハンターバンクへの誘いがあって、ついにイノシシの解体も経験。念願はかなったものの、そこにはまだまだ反省すべき点があったと、勉強の道は続きます。家庭では実践的な食育の道も模索していて、息子さんの将来も期待できそうです。
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