箱わなで「捕れる場所」は、どうやって見つけるのか
「捕れる場所」には、二つの意味があります。
一つは、動物がいて、技術的に捕獲できる場所であること。もう一つは、法的・社会的に、捕獲してよい場所であることです。
足跡や獣道があれば、そこに箱わなを置けばよい。そう思われるかもしれません。しかし実際には、動物が通っているというだけでは、箱わなの設置場所にはなりません。
捕獲の許可を得られるか。土地の所有者や地域の理解を得られるか。安全に見回れるか。捕獲後に速やかに対応し、解体する場所まで運べるか。
ハンターバンクでは、こうした条件を一つずつ確認しながら、箱わなを設置する場所を決めています。

まずは、捕獲する地域を大まかに探す
最初に行うのは、捕獲を行う地域の選定です。
ハンターマップと呼ばれる鳥獣保護区等位置図などを確認します。これは、狩猟ができる場所と禁止されている場所などを色分けして示した地図です。
こうした地図を使い、捕獲が可能な区域や、農作物への被害が発生している地域などを大まかに調べます。
ただし、地図だけでは現地の状況は分かりません。地図上では箱わなを設置できそうに見えても、実際には急斜面だったり、道路から遠く離れていたりすることがあります。反対に、地図からは分からない動物の通り道や、農地への侵入経路が見つかることもあります。
あわせて、地域の農家さんや住民の方からも話を聞きます。
「最近、畑の作物を食べられた」
「夜になるとイノシシを見かける」
「この山際からシカが下りてくる」
こうした地域の方からの情報は、設置場所を考えるうえで非常に重要です。
地図の情報と地域の方からの聞き取りを重ねながら、箱わなを設置できそうな地域を絞っていきます。
現地で動物の痕跡を確認する
候補となる地域が決まったら、スタッフが実際に現地を歩き、踏査を行いながら動物の痕跡を確認します。
見るのは、足跡やフンだけではありません。
土を掘り返した跡、木や柵に付いた毛、泥浴びをした跡、獣道、農作物の食害、柵をくぐったり押し倒したりした跡など、さまざまな痕跡を探します。
大切なのは、動物が一度通っただけの場所なのか、継続的に利用している場所なのかを見極めることです。
箱わなは、設置すればすぐに動物が入るものではありません。エサを置き、警戒心を解きながら、箱わなの近くまで寄せ、少しずつ中へ誘導していきます。
そのため、たまたま動物を見かけた場所よりも、普段から繰り返し利用されている場所の方が、設置場所として適しています。
また、痕跡を確認するだけでなく、箱わなを置ける平らな場所があるか、安全に近づけるか、車両がどこまで入れるかといったことも、踏査の段階であわせて確認します。

捕れる場所でも、箱わなを置けるとは限らない
動物の痕跡が多く、捕獲可能性が高いと思われる場所であっても、必ず箱わなを設置できるわけではありません。
箱わなは、エサを使って動物を誘引します。そのため、近くに防御が十分でない畑がある場合は注意が必要です。
たとえば、農地に柵が設置されていなかったり、柵に大きな隙間があったりすると、エサに誘引されたシカやイノシシが、箱わなに入らず畑へ向かってしまうことがあります。
捕獲するために置いたエサによって、かえって農作物への被害を増やしてしまっては本末転倒です。
箱わなの周辺にどのような農地があるのか。作物は植えられているのか。侵入防止柵は機能しているのか。エサを置くことで周辺にどのような影響が出るのか。
こうした点まで確認する必要があります。
また、民家に近すぎる場所も慎重に判断します。
箱わなに入った動物は、驚いて暴れたり、大きな音を立てたりすることがあります。捕獲後には、現地での処置や搬出作業も必要です。
動物が頻繁に通る場所であっても、周辺の生活環境に大きな影響が出る場所は、設置場所として適しているとは限りません。
こうした周辺環境への配慮に加えて、通信環境も欠かせない条件です。
ハンターバンクでは、原則として箱わな一基につき1台以上の通信型トレイルカメラを設置しています。捕獲の有無だけでなく、動物の接近や箱わなの状態を遠隔で確認するためです。
そのため、候補地の通信環境も、設置場所を判断するうえで重要な要件です。
アンテナの向きや設定を工夫することで、条件が不利な場所でも設置できる場合はありますが、通信の見通しが立たない場所は、その点も踏まえて判断する必要があります。
捕獲後の動物の状態も考える
箱わなの設置場所を決める際には、捕獲された後の動物の状態も考えます。
ハンターバンクで使う箱わなは、ワイヤーメッシュ製です。
日陰のない場所では、捕獲された動物に直射日光が当たり続けます。
シカやイノシシは、捕獲されると警戒や興奮から箱わなの中で暴れることがあります。そこに夏場の強い日差しが重なると、急速に体力を消耗し、弱ったり、死んでしまったりすることがあります。
そのため、同じように動物の痕跡がある場所であれば、木陰になりやすく、日中に強い直射日光が当たりにくい場所の方が、設置場所として有利です。
ただし、木陰であればどこでもよいわけではありません。
倒木や落枝の危険はないか。トレイルカメラの撮影範囲を確保できるか。見回りの際に安全に近づけるか。
こうした条件もあわせて確認します。
捕獲された動物が発見前に死んでしまうと、食肉として利用できない場合があります。
せっかく捕獲した動物であっても、肉を活用できなければ、その命を十分に生かすことができません。
箱わなの設置場所は、捕獲された動物を適切に扱えるかという視点でも考える必要があります。
捕獲後に運び出せるか
捕獲後には、止め刺しなどの処置を行い、解体や処理ができる場所まで動物を運びます。
シカやイノシシは非常に重く、人の力だけで長い距離を運ぶのは簡単ではありません。
そのため、軽トラックなどの車両が、できるだけ箱わなの近くまで入れることも大切な条件です。
動物の痕跡が多い山奥であっても、急斜面を長距離運ばなければならない場所では、捕獲後の対応が難しくなります。
箱わなまで安全に近づけるか。車両を止める場所があるか。捕獲した動物を積み込めるか。解体場所まで速やかに運べるか。
設置前から、捕獲後の動線を具体的に考えておかなければなりません。
箱わなは、動物が入った時点で仕事が終わる道具ではありません。
捕獲を確認し、現地へ向かい、適切に処置し、運び出す。その一連の作業まで成立する場所であることが必要です。
地域への説明と捕獲の手続きを行う
設置候補地が決まったら、必要な手続きを進めます。
土地の所有者の了承を得ることはもちろん、必要に応じて近隣の住民にも、箱わなを設置することを伝えます。
箱わなは大きな設備です。見慣れない人にとっては、不安を感じるものでもあります。
・何のために設置するのか。
・誰が管理するのか。
・どのくらいの期間設置するのか。
・捕獲された場合に、どのように対応するのか。
こうした情報を事前に共有することが、地域で安全に活動を続けるためには欠かせません。
動物がいるからといって、自由に箱わなを置いてよいわけではありません。
捕獲に必要な許可を得て、土地の所有者や地域の理解を得る。ここまで整って、初めて「捕獲してよい場所」になります。
捕れる場所とは、最後まで管理できる場所
箱わなで捕れる場所を探すと聞くと、獣道や足跡を見つける技術を思い浮かべるかもしれません。
もちろん、動物の痕跡を読み、継続的に利用されている場所を見つけることは重要です。
しかし、ハンターバンクが探しているのは、単に動物が通る場所ではありません。
地図や被害情報から地域を選び、地域の方から話を聞き、動物の痕跡を踏査で確認する。
さらに、周辺の農地や住宅への影響、通信環境、見回りの安全性、日当たりを確認する。捕獲後には速やかに対応し、車両で搬出して、解体場所まで運べなければなりません。
そのうえで、必要な許可を得て、地域の理解を得る。
「捕れる場所」とは、動物がいて、技術的に捕獲できるだけではありません。
法的・社会的に捕獲することが認められ、捕獲された後まで責任を持って管理できる場所です。
動物が通る場所と、箱わなを継続的に運用できる場所は、同じではありません。
こうした条件がそろって、初めて箱わなを設置できる場所になります。
ハンターバンクでは、こうした道具の使い方も含めて、初心者が現場を理解しながら学べる説明会や会員向けの情報発信を行っています。
狩猟や獣害対策に関心がある方、現場を見ながら学んでみたい方は、ぜひ説明会にご参加ください。
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