さまざまなスタイルで「ハンターバンク」を利用しているハンターさんたち。
狩猟を始めたきっかけも、活動のペースも多種多様なのですが共通するのは〈自分らしく〉楽しんでいること。そのあたり、聞いてみました。

ハンター体験記 Vol.8 高波健一さん  [その2]

イノシシから守りたかったのは、
畑ではなく、うちのワンちゃんでした。

入門プランの3カ月の間にもめでたく猟果に恵まれて、止め刺しから解体までひと通りの経験を積むことができた高波さん。もともと興味もなかった狩猟だったのに、始めてみたらいつの間にか次の目標が、そのまた次の目標が、と浮かび上がってきて、どうやら新米ハンターを卒業する日も遠くなさそうです。

──ところで、高波さんとしては3カ月のお試しが終わって、いまは通常プランでハンターバンクでの活動を継続されているわけですね?

高波さん: そうですね。同じ時期に入門プランだったメンバーのうち、11人が継続してるんですけど、チームを分けて4つの箱わなでやっていたのを、獲物が来そうな2カ所に絞って、チームも分けないで、同じ時期にスタートした11人でシェアする感じになってます。

 

──がんばればまた獲れそうな感じがあった、ということですよね。

高波さん: もちろんそれもあるんですが、いろいろ勉強したいというのもありまして……。実は、ひと通りの作業をやってみて流れもわかったので、自分でも箱わなを買ったんですよ。

──それはまた思い切りましたね。いずれは箱根の、ご自宅の近くでも、ということですか?

高波さん: あの、年末にホームセンターで1万円引きのセールをしてまして……。ま、まだ狩猟免許はないので、今年の試験で免許を取って、それで箱根のどこかに設置しようと思ってたんですけど、箱根は豚熱が出て、イノシシがいなくなっちゃったんですよね。散歩してても、犬も反応しなくなってて……。ともかく、何年かかるのかわからないですけど、豚熱が落ち着いてまた箱根にイノシシが増えてきたら、自分の箱わなが置けるように、それまではハンターバンクで経験を積んでおこう、ということですね。小田原のフィールドは安定的に獲物が獲れそうですし、ハンターバンクで知り合った人もいるわけで。

──その日のためのハンターバンク、ということですね。それにしても箱わな、いきなり買う人もあまりいないと思いますけどね……。

高波さん: 自分、仕事で溶接もやっていて、ウチにも溶接機あるんですよ。それで鉄筋を買ってきて自分で箱わな作ろうかな、とも思ったんですが、ちゃんとやるとなると10センチ間隔で200〜300カ所くらい溶接しなけりゃならないんです。もちろん材料費もかかるわけですから、安くなってるときに買っといたほうがいいかな、と……。

──じゃあ「その日」が来るまでは、買った箱わなは大事にしまっておいて……。

高波さん: いや、それがですね……「箱わな買っちゃてさ〜」という話をしたら、弟の奥さんの実家がミカン畑とかキャンプ場とか持ってて、そこにイノシシが出てるからなんとかしたい、という話になりまして、免許を取ったらそっちでも置かせてもらえそうなんですよね。

──あっという間に自分のフィールドがまたできそう、ってことですね。狩猟免許の試験、がんばらないといけないですね。

高波さん: 弟はもう「獲れたら肉ちょうだい」とか言ってますからね。

──なんか、もともと狩猟に興味がなかった高波さんなのに、頭の中が一気に狩猟マインドになってますね。

高波さん: そうですね。実際にハンターバンクで箱わなをセットしても、ウチらの箱わなだけひと月くらい来てなかったんですよ、イノシシ。トレイルカメラにも映ってなくて。それでチームの何人かが現場を見に行こうという話になって、自分はそのとき行けなかったんですけど、箱わなを置いた場所のちょっと下に獣道があったぞ、という話になって……。

──そのメンバーの皆さんは下から歩いて上がってた、ということだったんですか?

高波さん: そうなんです。自分はいつもクルマかバイクだったので、あの山を歩くってことがなくて、箱わなのすぐ近くしか見てなくて、その獣道には気が付いてなかったんですよね。それで、その獣道から箱わなまでの間に、ヌカを丸めて埋めていったら、見事にイノシシが誘引されて、箱わなのところまで寄ってくるようになったんです。そこからは、家から近いのもあって自分がしょっちゅう通うようにして、箱わなの近くのエサを多く撒いたり少なく撒いたり、いろいろ試してたら、そのうち箱わなの中で親子3匹が食べるようになって、それで「年内に勝負!」ということで蹴り糸をひとつ手前にセットして、2日くらいで子イノシシが獲れた、ということだったんです。

──それはいい判断でしたね。

高波さん:  運も良かったとは思うんですが、やっぱり歩かないとダメだ、ってことでしょうね。ともかく、犬の散歩で出くわしたことからはじまったイノシシへの興味ですけど、ハンターバンクで活動してみて、いろんなことがわかってきました。トレイルカメラでイノシシの動きが見えるのも、足跡だけで見ているのとはイメージが全然、違うんですよ。いちどトレイルカメラで見ておけば、カメラがない場所でもイノシシの動きを想像しやすくなると思います。

──なるほど。いい学びがあったみたいですね。

高波さん: 次は……獲れたイノシシの、肉としての処理のことですね。血抜きとか冷却とか管理方法とか、そこはもっと勉強したいところです……肉を美味しくするためには。

──やっぱり次の猟果では、干し肉はもっと極めて、ほかの肉料理にも挑戦してくださいね。では最後に、この記事でハンターバンクに興味を持たれたかたに、ひとことお願いします。

高波さん: ハンターバンクって、自分が思っていたよりも敷居は高くなかったですよ、というのは知っておいてもらいたいですね。迷ったらやってみよう!みたいな感じで、仲間が増えるといいな、と思います。

──そうですね。どうもありがとうございました。



高波健一さん(たかなみ・けんいち)
生まれも育ちも、さらには仕事も地元、という箱根っ子。もともと狩猟に興味はなかったものの、増えすぎたイノシシは、気がついたらすぐそばに迫ってきていました。そんなドッキリ体験からハンターバンクを見つけた高波さんの目標は、自宅の近くにも箱わなを置くこと。ワンちゃんとの散歩の平和のためにも(そして美味しい干し肉のためにも!)ハンターバンクで修行中です。
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