豊岡でキョンが増えてきた気がする|シイの実を集めようと思った理由
現地スタッフの山本です。
豊岡でちんたら村を作り、豊岡に住んで6年ほどたちましたが、最近、キョンを見る機会が増えてきたように感じます。
豊岡は、房総半島西岸にある富津市の山あいの集落です。
集落の中央を流れる湊川の上流域には、今でもホタルが多く生息しています。豊かな里山と水辺の環境が残る地域ですが、その一方で、シカやイノシシ、そして近年ではキョンとの付き合いも避けて通れません。
以前から房総半島でキョンが増えていることは知っていましたが、これまではシカやイノシシが多くキョンはたまに見かけるといった程度でした。
そもそもの生息数がシカやイノシシの方が大きいこと、キョンの被害もまだ少ないので気が付かなかっただけかも知れません。そのため、豊岡ではキョンはどちらかと言えば後回しでした。
ところが、最近は少し様子が変わってきたように思います。

豊岡の南側には地獄のぞきで有名な鋸山があります。その鋸山を越えると鋸南町です。
豊岡は富津市で鋸南町とは別の地域ですが、車で行き来できる距離にあり、鋸南でもハンターバンクをしていることもあり、イベントを一緒に開催したり、捕獲技術や知識を共有しています。
その中で聞く話では、鋸南側では、シカよりキョンの方が多い場所もあるようです。
一方で鋸山の北側にあたる豊岡周辺では、まだシカの方が優勢な印象があります。
それでも、以前よりキョンの存在感が少しずつ大きくなってきたように感じています。
■キョンってどんな動物?
キョンは、中国南部や台湾を原産とする小型のシカの仲間です。
千葉県の資料では、肩までの高さは40cmほどで、中型犬と同じくらいの大きさとされています。もともとは千葉県どころか、日本にも生息していなかった動物ですが、飼育個体が逃げ出し1960年代から80年代にかけて野外に定着したと考えられています。
現在は房総半島を中心に生息域を広げており、農作物への被害や自然環境への影響が問題となっています。
環境省により特定外来生物にも指定されていて、野外に定着してしまった個体は駆除が必要とされています。
■キョンは意外と捕まらない
キョンが厄介なのは、シカやイノシシと同じ捕獲方法が通用しないことです。
ハンターバンクでは箱わなを使った箱わな猟で捕獲をしています。
箱わな猟では、エサで動物を誘引します。シカやイノシシには、米ぬかを誘引用のエサにするとよく効きます。
ところがキョンには、米ぬかがあまり効きません。
「シカやイノシシなら寄ってくるのに、キョンだけは入らない」
これ、良く聞く話ですし、実感としてもまさに!です。
この捕まえにくいというのも、富津市豊岡でキョン対策が後回しになってしまった理由かもしれません。
■鋸南で教わったキョン対策
ハンターバンク豊岡では、すぐ南にあるハンターバンク鋸南と連携しながら活動しています。
豊岡だけで考えるのではなく、近い地域同士で、うまくいったことや失敗したことを共有しています。
野生動物にとっては市町の境界線は関係ないですし。
ハンターバンク鋸南のメンバーに教わったことの一つが、
「キョンの誘引にはシイの実が効く」
ということでした。
ただし、ドングリなら何でも良いわけではありません。
特に有効なのは、
・スダジイ
・マテバシイ
などのシイ類の実です。


・コナラ
・クヌギ
などのドングリでは、まったく反応しないそうです。
最初はドングリなら何でも同じだと思っていましたが、キョンにも好みがあるようです。
これ、人間が食べ比べをしてみるとすぐに分かります。
スダジイやマテバシイはアクが少なく、そのまま炒って食べてもおいしいドングリです。
栗よりおいしいというスタッフもいました。
逆にコナラやクヌギは渋みが強く、食べるにはアク抜きが必要になります。
キョンも「食べておいしいドングリ」を選んでいるのかもしれません。
■ 房総半島にはシイの木がたくさんある
房総半島にはシイの木が数多く生えています。
特にスダジイは、この地域にもともと広く分布していた樹木です。
秋になると大量の実を落とします。
イノシシや鳥たちも食べますが、キョンにとっても重要な食べ物になっているようです。
キョンが房総半島で増えてしまった理由は複数あると言われています。
豊富なシイの実がある環境は、キョンにとって暮らしやすく、増えてしまった理由の一つだろうなと思います。

さて、6月はスダジイやマテバシイの花が咲く時期。
この時期になると、森全体がむっと甘い独特の匂いに包まれます。
東京近郊の里山ではクリの花の匂いと混ざって分かりにくいこともあると聞きますが、房総半島では、クリよりシイ類に存在感があります。
この季節、集落の山を歩くと、「ああ、ここもシイの森なんだ」と鼻でも分かります。
■ 今年の秋はシイの実を集めてみる!
キョン対策にシイの実を誘引に使えないかと考えています。
ただ、問題はシイの実が一年中手に入るわけではないことです。
シイの実が落ちるのは秋だけです。
そこで今年は、会員の皆さんと一緒にシイの実を集めて、ストックしてみようと思っています。
豊岡ではこれまで、シカやイノシシへの対応が中心でした。
しかしキョンが増えてきた今、キョンとも本気で向き合う時期がきたのかもしれません。
今年の秋は、捕獲だけではなく、ドングリ拾いも大切な活動になりそうです。
秋になったら、集めたシイの実が本当にキョンに効果があるのか、みんなで確かめてみたいと思います。
ハンターバンク豊岡、始まってもうすぐ1年になります。日々、地域の自然や野生動物と向き合いながら、また少しずつ勉強しながら活動をしています。
狩猟経験や免許の有無に関わらず参加できる説明会も開催していますので、豊岡の里山や野生動物との関わりに興味のある方は、ぜひ一度ご参加ください。